散歩道の谷津田に危機が迫ってきた
つい先日、町会の回覧が回ってきた。普段ならざっと眺めてすぐに回してしまうところだが、散歩道の最も上流にある谷津田の埋め立て計画の資料がついていた。散歩道の再上流、私がニホンアカガエルを最初に見つけて、それ以来ずっと観察しつづけてきた場所の二股にわかれた谷の一つを大規模に削り、土砂を埋める計画だ。全体の面積は5ヘクタールに及ぶ。
資料によると、宅地開発という。だが、ここはそもそも市街化調整区域だから建物は建てられないはずなので、とても疑問を感じる。
今はここは休耕田となり、草が生い茂っているものの、ここでニホンアカガエル(千葉県レッドデータブックA:最重要保護生物)、アズマヒキガエル(千葉県レッドデータブックC:要保護生物)、ハラビロトンボ(千葉県レッドデータブックB:重要保護生物)、ホトケドジョウ(千葉県レッドデータブックC:要保護生物、環境省RDB絶滅危惧種IB)などが生息している。
この谷津田に生息するニホンアカガエル(千葉県レッドデータブックA:最重要保護生物
この谷津田周辺に多くみられるハラビロトンボ(千葉県レッドデータブックB:重要保護生物)
この谷津田の水路などに生息するホトケドジョウ(千葉県レッドデータブックC:要保護生物、環境省RDB絶滅危惧IB類)
また、この周辺ではサシバ(千葉県レッドデータブックA:最重要保護生物、環境省RDB絶滅危惧II類)が営巣しており、この周辺は採餌場所として重要な役割を果たしているものと思われる。
この谷津田周辺で営巣するサシバ(千葉県レッドデータブックA:最重要保護生物、環境省RDB絶滅危惧II類)
私がこの地に来てから、この周辺の谷津田などの環境はどんどんと削り取られていった。それをなんとかしたいと思って始めたのが「散歩道プロジェクト」だ。「散歩道プロジェクト」をはじめてもう17年。私はずっとこの場所の自然を見守ってきた。
先日来、このブログに書いてきたアズマヒキガエルのオタマジャクシが卵から孵って上陸するまで、本当に我が子のように思って見つめてきたし、毎年、この周辺のニホンアカガエルは産卵から上陸までを記録している。特にこの谷津田周辺は本当にニホンアカガエルの楽園だった。休耕になって環境が悪化し、以前のように何百という産卵は見られなくなったものの、それでも、毎年産卵にやってくるニホンアカガエル。しっかり命を繋いできているのだ。
いまでも、近所の子供たちが、この周辺で捕虫網を持って虫捕りに必死になって遊んでいる。かつて、うちの娘たちもここで虫捕りをして遊んだし、この周辺の水路で捕まえてきたザリガニを家で名前を付けて飼っていた。そうして自然と戯れた経験はとても大切なものとなっていることだろう。
様々な社会的困難があることは承知する。しかし、この最後に残された豊かで貴重な自然を後世に伝えていくことが今を生きる私たちの役目なのではないか?と思う。
今は、自然を守ろう、環境を守ろうと世の中みんな言っているじゃないか?プラスチックゴミの問題が広まれば、すぐにプラスチックゴミを減らそう様々な取り組みが行われているではないか?オリンピックの会場建設のために、都内のある公園の環境破壊が大きな問題になり、人々の力でその計画縮小がなされてきたではないか。環境にやさしく、自然にやさしくといいながら、ここにわずかに残された貴重な自然、太古から延々とつながれてきた命たち、そんなものを人々の一瞬の人々の利害のために、取り返しのつかない破壊が行われてよいのか?
ここは多くの人が犬の散歩やジョギングで通る。豊かな自然の中で、緑の息吹を感じながら、歩いたり、走ったり。この周辺の自然に囲まれた素晴らしい市民農園で、作物を作っている人々もいる。そうして、私たちは自然から多くの恵みを得てきたではないか?多くの人がこの場所を歩いて安らぎを得てきたではないか?それが大きく破壊されようとしているのだ。
先日から色々な人に働きかけたりして、なんとかこの場所を救えないかと色々始めたところだ。だが、意外と人々の関心は薄い。この自然を愛していた筈の人々は沢山いるはずだ。なのに、何故なのだ?面倒なことには近寄りたくないのかとは思う。
そりゃあ私だって、何もせずにいたほうが平和だし、苦労もない。だが、私はここの自然を見つめて、守っていくことをライフワークときめて、もう20年近くもここを愛してきたのだ。そんなことをしたって、なんの得もない。だけれど、私の人生の多くの部分をこの場所の自然と向き合って過ごしてきたんだ。それが無くなるなんて、命を奪われるような気持ちなのだ。もし、私がここで何もせずにいて、ここの自然がズタズタにされてしまったら、一生後悔する。だからとにかく、やれることは全部やる。私は、ここの自然を守ることで一銭のお金も得られないどころか、むしろお金を沢山使う羽目になるし、ものすごい労力と心が折れそうになる様々な事柄と、そういうものに相対していかねばならない。苦しいだけだけど、この場所から沢山の力をもらい、安らぎを与えてくれたこの自然への恩返しだ。それをやらずに死ねるかっていうんだ。やれることは全部やるんだ!私がこの地で自然を見つめて過ごしてきた長い長い時間を無駄になんかしたくない。
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コメント
環境が生きものにとってどれほど重要か、現代人は判っていながら目先の利益に走ってしまう。
暮らす人間もまた、環境の構成要素だという客観性に気付いて欲しいですよね。
生きること、食べること、暮らしも含めて、人間社会だけを特別視しない感覚を子供にも植え付けたいものです。
感謝と慈しみと、少しの怖れ・・・自然から学び、自然に還す。
TAGAさんの行動に期待しています。
投稿: ふりーぱ | 2020年6月15日 (月) 02時22分
ここの工事計画を知ってから、いろんな人の協力を得たり、いろんなことを調べたりしつつ、少しずつ前進しています。だけど、そうすると、人間社会ってダメだなあとつくづく思った。人間も生き物だから、生き物が普通に暮らせる自然環境ってとても大事なのですが、どうしても、人間の頭の中だけで、損得勘定だけで考えてしまう。世の中そんなことにがんじがらめになっています。
昔に比べて、環境の大切さが言われる世の中になってきたとは感じるけれど、まだ、どこかが違う、何かが違う。どうしてそうなってしまったのか。
諦めずに頑張ろうと思っています。
投稿: TAGA | 2020年6月19日 (金) 00時02分