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2018年12月 2日 (日)

クロコノマチョウ

 瀬戸内で生まれ育った私にとって、クロコノマチョウという蝶は、子供のころから図鑑でしか見たことのない蝶だった。あの美しい目玉模様を図鑑などで見て、こんな蝶がいるんだなあと思っていた。千葉にやってきてその姿を初めて見たときは、驚いたものだ。Konoma20070728 一度見かけてからは、このチョウはいるところにはふつうに沢山いることがわかった。しかし、たいていは、こんな風に翅を閉じて止まっていて、翅の表にある美しい目玉模様が見えない。一度、飛んでいるところをむりやり写真をとって、なんとなく目玉模様が見える写真が撮れたことがある。Kurokonoma2016102302 この時は少しうれしかった。しかし、この目玉模様をはっきりと見るには捕獲するしかないのかなあと思っていた。
 今日、いつものようにくねくね峠にいった。Kunetoge2018120201 峠道はすっかり落ち葉の絨毯に覆われている。定点観測写真などをとっていると、時折落ち葉が雨のように音を立てて降ってくる。そんな中、乾いた落ち葉の絨毯を踏みながら歩いていたその時のことである。足元で何か黒いものが飛んだ。一瞬、落ち葉が何かの拍子に舞ったのかと思ったが、みると、そこにはクロコマノチョウがいた。
「あ、ごめん、踏まなかったかな?」
とっさに独り言を言った。
見ると、かなり翅がいたんでいて、瀕死の状態という感じだ。無理もない、もう12月だもの。翅を完全に閉じる力がないのか、翅の先端が半開きになっていて、美しい目玉模様が見えるではないか!
Kurokonoma2018120201 いつもは、近づくと素早く逃げていく蝶だが、近づいてもまったく動く気配がない。触ろうとしたら、触覚を触れたほどだ。
「生きてる??死んでる??」
とおもった次の瞬間、パタパタと最後の力を振り絞って飛ぼうとするのだが、うまく飛べない。そして、落ち葉の間に翅を開いたまま舞い降りた。Kurokonoma2018120202 美しい目玉模様がはっきりと見えた。まるで最後の力を振り絞って、目玉模様を見せてくれたかのようだった。
やがて、翅を閉じたが、ほとんど動く力がないのか、翅を半開きの状態で立ってるだけという感じだった。
何がということもないのだが、
「ありがとうね!」
私はそうつぶやきつつ、最後の姿かもしれないその姿を振り返りながらその場を去った。Kurokonoma2018120204

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