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2012年7月29日 (日)

くねくねの主、死す

先週、久しぶりに、くねくねの主に会うことが出来たことはここに書いた。。それが嬉しくて、彼と出会ってからの5年間のことを動画にまとめたりした。そうして、最近になって持ち歩くようになったビデオカメラで動いている彼の映像を初めて公開することができたのだった。

それから一週間。まさか、このような結末が待っているとは。

暑い暑い夏の日である。ニイニイゼミの大合唱の中を、くねくね峠道を登っていったのだ。Kunemichi2012072901 いつものように定点撮影場所で写真を撮り、くねくねの主の棲む穴まで歩いて行った。「きょうはどうしているかな?」と、元気な姿を想像しながら歩いた。ところが、目にしたのは、信じたくない光景だった。Nushi2012072901 くねくねの主は、穴の入口で息絶えていた。すでに蠅がたかっている。

「どうしたんだ!」

思わず叫んだ。

わたしはその場にしゃがみ込み、くねくねの主の最後の姿をじっと見る。一体何があったんだ。

彼と出会ってからの5年間のことが、グチャグチャになって頭に浮かぶ。先日まで元気だった彼にはもう会えないのだ。そのことは私にとって受け入れがたいことのように感じてしまう。

「いままで、ありがとう」

何度も何度も、自分自信に言い聞かせるように声をしぼりだした。そうして、静かに手を合わせる。何度も何度も手を合わせ、目を閉じる。そして、また目をあけて変わり果てた彼の姿をみる。

何があったのだろう?特に外傷があるようにもみえなかった。昨日の異様な暑さにやられてしまったのかもしれない。原因はわからない。だが、彼は死んでしまったのだ。

彼をどこかに埋めることも考えたが、彼はこの穴にいるのが一番だろう。ここは目立つこともないし、彼のことを気にかけてくれていた人々も、ここを通りかかれば、彼の姿に気付くかもしれない。Nushi2012072902

「いままで、本当にありがとう」

何度も何度もそう言った。私はしばらくそこにしゃがみこみ、何度も何度も手を合わせ、何度もなんども目を閉じた。

そうして、立ち上がり、ゆっくりとその場を去った。急に風がビューッと吹いてきて、木々がザワザワと揺れたKune2012072902 。田んぼの稲が風に波立つ。ニイニイゼミの大合唱の中、背中から彼が風にのって私を追い越していった。そんな気がした。

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2012年7月23日 (月)

くねくねの主(ぬし)5年目の夏

気象庁の梅雨明け宣言はちょっと勇み足だと思った。案の定、梅雨が戻ってきたような天候になった。おかげで涼しくて、散歩に出かける気になる。

くねくね峠道の入り口付近に咲いたヤマユリは、周囲の刈られた草に埋もれそうになりながら、その姿を見せている。Yamayuri20120722 まるで「掃きだめに鶴」ならぬ「掃きだめにヤマユリ」といった様相だ。それでも、周囲にとてもよい香りを放っている。草刈りした人も、ヤマユリは残しながら注意して刈ったのだろう。それを思うと、少し微笑ましい。

 くねくね峠はすっかりと緑のトンネル道になっている。Kunemichi20120722 10年近く前に、この道の脇の木が少し伐られて、少し明るい道になっていたが、数年でうす暗いトンネル道が復活した。今はすっかり緑のトンネル。とはいえ、周囲はコナラやクヌギなどの落葉樹の林なので、冬には明るい道になる。夏の晴れた日は木漏れ日が揺れる。

先日綺麗な花をさかせていたヤマユリはもうその役目を終えた。それでいいのだ。花が終わるまで、ここで咲いていたこと。それがよかった。Yamayuri2012072202 花が終わるまでに、心ない人に持っていかれないでよかった。そう思える。

夏になっても、相変わらずさえずっているウグイス。それよりも、今は、強烈な耳鳴りのようなニイニイゼミの甲高い声が聴こえている。夏だ。夏がやってきたのだ。賑やかな夏の始まりだ。

この奥に棲む「くねくねの主」。今日はいるだろうか?と思って穴を覗くと、キラリと光る目玉が見えた!

「おおっ、いたね!お久しぶり!」

思わず声にだしてしまう。

Kunenushi20120722 主はいつものように、のどをヒクヒクと動かしながら、一瞬穴から出てこようとする。だから、私はいつも「いいよいいよ、そのままで」といいながら、写真を撮る。

「元気にしてたかい?」

そういって話しかける。しばらく、見つめあいながら、無言の会話が始まる。

いつものことだが、私はしばらくそうやって、時々「うん、うん」とうなずいたりする。そして、

「じゃあ、またね!元気でね!」

といって手を振ってその場を去る。

もう、彼(彼はオスのアズマヒキガエルだ)とは、5年の付き合いになる。夏の暑い日には、ここで彼に会える確率が高い。いつもは野山を歩きまわっているのだろうが、夏の昼間は暑いので、この涼しい穴の中に避難しているのだろう。

いつまでの付き合いになるかわからないが、彼がここでまっとうな一生を終えることができるように見守っていきたい。

彼のことは、このブログや私の講演会などでも紹介しているので、随分と有名になっているんだよ。と、彼に教えてあげたい。彼はどう思うだろうか?いや、そんな人々がこの世の中にいて、こんなネットや写真というもので姿を見られるなんて、想像できないに違いない。私は彼にとっては宇宙人のようなものなのだから。

彼と出会ってからの5年間をビデオ形式にまとめてみた。

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2012年7月21日 (土)

ユリの季節がやってきた

ユリの仲間といっても、ユリ科ということになると広すぎて、ヤブランなどの見た目がユリとは思えないものまで含んでしまう。この時期に咲く、ユリらしいユリが私はやはり好きだ。

今年休耕になってしまった田んぼの畦にはノカンゾウが咲く。Nokanzo20120716 もともとこの近くの斜面には毎年ノカンゾウが沢山咲くのだが、この田んぼの畦では、数年前にポツリと1株だけ現れた。それが少しずつ増えてきた。

明るいオレンジ色のノカンゾウ。似た色の花にヤブカンゾウがある。Yabu2012071602 もともと、散歩道にはヤブカンゾウの方が圧倒的に多かったのだが、だんだんとノカンゾウの方が優勢になってきたような気がする。八重咲きのようにみえるヤブカンゾウと、すらりとスマートなノカンゾウ。どちらもそれぞれに魅力的である。

しかし、やはり、圧倒的な美しさといえばヤマユリだろう。Yamayuri20120716 重さで垂れ下がるほどの大きな花。そして、輝くような白の地に、黄色のラインと茶色の斑点。 Yamayuri2012071602 これは改良された園芸種ではなくて、れっきとした野生種なのだ。日本の花のなかでも有数の美しさだろう。かつて、日本はヤマユリをヨーロッパに輸出していたという。そして、カサブランカをはじめとした多くの園芸種に改良された。それでも、原種であるヤマユリにはかなわないと思う。近くをとおりかかっただけで、その強烈な香りで存在をアピールする。

ヤマユリの茎はしなやかで、ゆえに、花の重さもあってまっすぐ自立することが出来ない。斜面から下を向くように生えていることが普通だ。夏の木漏れ日の中、風が吹くと、木漏れ日とともに揺れる大きな花。ざわざわとまわりの林がざわめき、鳥たちがさえずる。そういう自然の音響効果もすばらし演出をしてくれる。こうして、汗をたらしながら、この花に会いに来れたこと。そうして、今、目の前で、この光景を独り占めしていること。こういうものを見ると、公園などに植えられた園芸種の花は、たとえそれがあたり一面の花であっても、何か足りないものを感じるし、こんな自然の中の体験とは比べ物にならない。そういう体験があるからこそ、この自然を守りたいと思うのだ。いや、決して花だけを守ろうとは思わない。花だけを守るとするなら、結局、園芸種になり下がってしまう。大切なものが失われてしまうのだ。この花をはぐくんでいる自然、花を含めてありとあらゆる生き物が力強く生きている自然。それこそが素晴らしいと思う。そのことを感じるからこそ、自然を守りたいと思うのだ。花を守るのではなく。ありとあらゆる生き物がくらす、この自然の中で、ここにこうしてこんなに美しい花が咲いていることの奇跡を感じることができること。それを大切にしたいのだ。

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