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2009年10月31日 (土)

クサカゲロウの幼虫、ゴミノッケとノッケーヌ

先日、飼っていたホシウスバカゲロウ(ホカスリ氏)が羽化したとき、妻が、餌は何を与えればいいのかと悩んだ挙句、もしかしたらアブラムシを食べるのではないかと、アブラムシが沢山ついていた庭のグレープフルーツの枝を水槽に入れてみたのだった。ホシウスバカゲロウの成虫はそんなものを食べる様子はなかった。だが、そこでまた大きな発見をした。

グレープフルーツの枝に、なにやらゴミの塊のような虫がいて、そいつがアブラムシを片っ端から食べていたのだ。Gominokke20091004

妻が「あ、ヘンな虫がいる!」といったが、私はそれを見た時、ピンときた。丁度、アリジゴクの観察をするために買った本に、そのような虫が載っていた記憶があったからである。私は、

「あっ!これは!」

といってその本を持ってきた。その本によるとクサカゲロウの仲間の幼虫らしい。

しばらく眺めていたら、もう一匹虫がいることに気付いた。そいつも、このゴミを乗せているやつ同様に凄い勢いでアブラムシを食べていく。

これもまた、クサカゲロウの仲間の幼虫としてその本に載っていた。Nokkenu20091004

わずか3~4ミリほどの小さな彼らを、とりあえず飼ってみることにした。

だが、問題は餌だった。グレープフルーツの枝の茎が見えないほどについていたアブラムシだが、彼ら2匹は物凄い勢いで食べ、2日ほどでアブラムシがまったくいなくなってしまったのだ。

どうも彼らは午前中の決まった時間に動き回ってアブラムシを食べる。それ以外はほとんどじっとしているのだが、動き回って食べるときの勢いは尋常ではない。食べるといっても、大顎でアブラムシを挟んで、アブラムシの体液を吸う。すい終わると、ポイッと投げ捨てる。

実は、ほんの最近まで、庭にはかなりの数のアブラムシがいたが、このところどんどん減っていたことには気付いていた。わずかに残っていたのが、そのグレープフルーツの枝だった。だからもう、庭のアブラムシを捕まえてくることは出来なかった。そこで、近所の草むらのセイタカアワダチソウを見にいった。セイタカアワダチソウにはセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシという赤くて毛の長いアブラムシがついているくとが多いので、そいつを狙った。狙い通りに、アブラムシのついたセイタカアワダチソウは沢山見つけることが出来た。

ただ、彼らはそれをあまり食べなかった。あれほど、食い尽くしたアブラムシだが、セイタカアワダチソウについたアブラムシは数は減ったが、食べつくすことはなかった。

子供達は、アリジゴク同様に彼らに名前を付けた。背中にゴミ(このゴミは実はほとんどが自分が食べたアブラムシの死骸)をのっけているやつを「ゴミノッケ」。背中にゴミをのせてないやつを「ノッケーヌ」と名付けた。

しばらくして、セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシがまだ沢山いるのにもかかわらず、彼らは何度も何度も水槽から脱走しようとしていた。どうやらセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシは口に合わないようだ。水槽は目の細かい網で蓋をしてあったのだが、あるひゴミノッケがいなくなった。どうやら水槽と網の蓋のわずかな隙間をくぐりぬけて脱走したようだった。

脱走したゴミノッケは、数日後、部屋の中に干していた洗濯物についているのを妻が発見し、水槽に戻した。Gominokke20091008

しかし、ゴミはほとんど剥がれてしまっていた。

それとほぼ同じころ、ノッケーヌは繭を作った。Nokkenu20091008

直径わずか4ミリほどの小さな小さな繭。どうやらその中で蛹になったようだ。

数日後ゴミノッケも繭を作った。こちらは、水槽の蓋にしていた網に繭を作ったのだ。Gomimayu20091011

大きさはノッケーヌの繭とほぼ同じくらいで、直径は3~4ミリというところだった。

とりあえず、しばらくはこの繭を見守ることにした。いつ成虫が出てくるのだろうか?このまま越冬するのだろうか?

ゴミノッケが繭を作ってからおよそ2週間後のある日の朝、妻がゴミノッケの水槽を覗いたら、水槽の底になにやら小さな虫が仰向けにひっくりかえって落ちているのを見つけた。これはゴミノッケが繭から出てきたのだろうか?そう思って繭を見たら繭に穴があいている。

仰向けにひっくりかえっていたそいつを、棒につかまらせたら、そいつは一人で棒を登っていった。Gominokke2009102801

その棒を水槽に入れて、そのまま放っておくことにした。

あとで知ったことだが、こいつは、繭から蛹が出てきて、その蛹が歩いて羽化する場所を探すのだそうだ。こういうものをファレート成虫というらしい。

それはそうと、そいつが羽化してクサカゲロウになるんだろうと思った。色もクサカゲロウの成虫と同じ黄緑色だ。

そいつは、その後、じっと棒につかまっていた。夜になってもまだそのままだ。

それにしても、とても小さい。もっとも、3~4ミリの小さな繭から出てくるんだから当然なのだが、体長がわずか4ミリほどしかない。私は、そいつをよくみようと、棒を少し動かしたら、そいつはポトリと落ちた。落ちたそいつはピクリとも動かなかった。

死んでしまったのだ。うまく羽化出来ずに死んでしまったのだ。Gominokke2009102802

元気に動き回ってアブラムシを食べていた姿を思い出すと、少し悲しかった。せっかくならちゃんと羽化させてやりたかったが、仕方のないことだ。

ただ、ゴミノッケはまた、私たちに、いままで知らなかったいろんなことを教えてくれた。そのことに感謝したい。忘れないよ。

ノッケーヌはまだ繭の中にいる。

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2009年10月25日 (日)

季節の病

季節性インフルエンザという言葉は今年初めてきいた。猛威をふるう新型インフルエンザに対して、従来のインフルエンザという意味なのだろうが、私はどうも違和感を感じる。

それはそうと、私は毎年今頃に風邪をひく。これはもう季節性といえる。丁度、長女の誕生日の頃だ。長女は1歳の誕生日に初めて高熱を出した。それから、毎年、誕生日の頃に体長を崩す。今年もその季節がやってきた。今年は、少し熱が出ただけでも「新型インフルか?」と大騒ぎになるが、幸い、発熱はなく、鼻水が出て、それからそれが喉にまわり、最後に咳が出て終わるというパターンだ。

とってもヘンな話しだが、それはそれで季節を感じるのである。窓から差し込んでくる夕陽がとっても綺麗なのもこの季節。Yuhi20031022

それを見ながら、「ああ、今年もやっぱり風邪ひいて寝ながらこれをみているな」と。

少し具合がよくなれば、少しだけ散歩にいこうという気になる。それでも、やはり遠出は出来ない。

葉っぱが、パラパラと落ち、隙間が多くなった木々の間を少し息をきらせながら歩く。額に汗が滲む。ひんやりとした空気がすがすがしい。

Kunetoge20091025 野焼きの煙がただよう季節。少し煤っぽい空気。

秋の虫も少しずつ静かになり、地面から、かすかにまばらな声がする。

秋が少しずつ深まり、やがて冬がやってくる。その少し手前で、私は今年も風邪をひいている。散歩の活動範囲が少し狭まり、季節を感じながら、ゆっくりと歩くだけ。体の中の季節も感じつつ。

インフルエンザでなくてよかった。

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2009年10月11日 (日)

ホカスリ氏はホシウスバカゲロウ

7月の後半、小学校5年生になる次女が、夏休みの自由研究に何をやろうかと悩んでいた。そこで、私が自分自身の自然観察の中で、日頃から不思議に思っていたアリジゴクの生態についてやるのがいいのではないかと思い、ほんの軽い気持ちで「アリジゴクの観察をしたら?」と言った。ただ、次女は、今までも、いろんなテーマで自由研究をやったけれど、なかなか根気が続かず、中途半端になってしまうことが多かった。自分から興味を持ってやり始めると続くのだが、興味を持つかどうかはやってみなくてはわからない。次女は私の提案に、とりあえず「おもしろそう!」と言ってくれた。

7月の終わりの暑い暑い日に、次女と一緒に散歩道にあるアリジゴクの巣を見にいった。普段、私は歩いていくが、次女が自転車でいきたいというので、自転車で行った。猛スピードで走る次女の自転車を追いかけるのは大変だった。Su20090731

散歩道をぐるっとまわると、アリジゴク巣のある場所は何箇所かあった。その中でも、巣の数が比較的多い場所で観察を始めることにした。巣の様子が毎日どんな風に変化するのか、ということが、主な目的だった。私が散歩の途中に見かけるアリジゴクの巣は、いつも同じ場所にあるわけではなく、新たな場所に突然出来たり、あるいは、土が崩れたりして消えることもあることに随分前から気付いていた。そこで、その実態を確かめようと思ったのだ。

いくつかの巣は掘り返して、アリジゴクを数匹捕まえて帰り、飼育して観察もやろうと思った。巣を掘り返してアリジゴクを取り出し、次女に見せた。すると、Arijigoku01

「かわいい~!」

といった。

いくつか巣を掘り返すうちに、ちょっとかわったヤツが出てきた。アリジゴクは通常、後ろ向きにしかあるかないが、そいつは前向きに歩く。Arijigoku03

「なんじゃこりゃ?」と思った。他のアリジゴクに比べて少し小さいし、体の形も少し違うようだ。でも、私はそれがまったく別の種類のモノだとは、その時点ではわからなかった。

そいつを連れてかえって、土を入れた水槽の中にいれると、他のヤツとは明らかに違う行動をとった。巣を作らずに、頭の先だけ土の上にだしているのだ。そして、餌になるアリなどがくると、サッと捕まえて食べてしまう。Arijigokusunashi

どう考えても、普通のアリジゴクとは違うので、博物館に写真を送って問い合わせてみたが、なかなか確証が得られなかった。最終的には、日本のアリジゴク研究の第一人者の先生のところまでたどりついてしまった。

アリジゴクはウスバカゲロウの仲間の幼虫で、日本には17種類が生息している。そのうち実際にアリジゴクといわれるすり鉢状の巣を作るものは5種類、他の多くの幼虫は巣を作らない(あるいは、まだ幼虫が発見されていない)。巣をつくらない種のうち、こいつはコカスリウスバカゲロウかホシウスバカゲロウの幼虫ではないかということになった。

ところで、私は仕事があるので、毎日次女の観察に付き合うわけにはいかない。そこで、次女と妻が毎日アリジゴクの巣を観察にいった。晴れの日も、雨の日も。雨の日は雨の日で、巣がどうなっているかというのは重要なポイントである。今年の夏は天候不順で雨の日が多かった。

家では、飼っているアリジゴクたちに、次女と妻が毎日、生きた餌をやるなど、まめに世話をして観察を続けていた。妻や次女が留守の時は長女が手伝った。そのうちに、愛着がわいてきたようで、次女は、巣を作る二匹のアリジゴクにはモリーとモリーヌ(モリモリと動くやつと、あまりモリモリ動かないやつという意味)と名前を付けた。巣を作らないヤツは「ホカスリ氏」(ホシウスバカゲロウかコカスリウスバカゲロウのどちらかであるという意味で)と名前を付けるまでになった。

夏休みも終わり、9月になったら、ホカスリ氏の姿が見えなくなり、餌をやっても食べた形跡がなくなった。もしかしたら、死んでしまったのかと思い、飼っていたガラスビンの土をくまなくしらべてみたところ、幼虫の姿はなく、そのかわりに直径8ミリほどの土の玉が出てきた。Mayu20090913

これは繭だ。アリジゴクは繭を作り、その中で蛹になる。こいつはついに蛹になったのだ。

だが、私は少し半信半疑だった。ウスバカゲロウの成虫は夏の昆虫ではないのか。だとしたら、秋になって蛹になることがあるのだろうか?秋になって蛹になったとしたら、蛹で冬を越すのだろうか?

とにかく、蛹になったとなれば、次は成虫が出てくるはずだ。成虫は幼虫とちがって翅があり、飛ぶことが出来る。だから、いつ羽化してもよいように、ビンに網で蓋をした。

それからしばらくたったある日の朝、妻から私の携帯電話にメールが来た。

「ホカスリ氏が羽化した!」

と。私はビックリしたと同時に、まるで我が子が生まれた知らせを受けたように、ワクワクした。一体、どんな成虫が出てきたのだろう?興味津々で家にかえってみると、ビンの蓋の網のところにそいつはとまっていた。Seichu001

妻と次女は写真を撮ろうとしたのだが、とまっている位置がわるく、上手く写真がとれなかったという。私も挑戦してみたが、うまくとれない。

ちゃんと写真を撮るためには、蓋をあけなければダメだが、蓋を開けたらこいつは飛んでいってしまう。

そこで、部屋を締め切り、捕虫網を用意して、慎重に蓋をあけた。案の定、そいつは部屋の中を飛び回ることになってしまった。私はそれを捕虫網で追い回していた。

そうやってホカスリ氏と格闘しながら、なんとか写真が撮れた。Uka2009100101s

触覚の長さなどから、どうやらホシウスバカゲロウのようだ。ようやく、正体が判明したのだ。

さて、それはいいとして、こいつはどうやって飼えばよいのだ??

かねてから相談していた博物館の人にまた相談してみるも、成虫は肉食ということはわかっているが、どうやって餌をとっているかはよくわかっていないらしい。どうやら、飛びながら、飛んでいる昆虫を捕まえて食べるのではないか?ということだが、そんなこと、家の中では到底再現できない。

せっかく飼育したのだから、標本にして残すべきとの意見もあったが、最初に捕まえてきたときに、次女と「成虫になったらここに放しにこようね」と約束していたこともあり、もといた場所に放すことにした。とりあえず、私の次の休日までの数日間はここでじっとしていてもらった。

それから最初の私の休日の夕方、私と次女と妻の三人で、もといた場所に放しにいった。最後に、何度かちゃんと証拠写真を撮って、放す。水槽の蓋をあけたら、フワフワと空気のように飛び出した。そいつをいちど、捕虫網でつかまえて、じっくりと観察する。何枚か詳細な写真を撮ったあと、次女の手の上にのせた。Hokasuri20091003e

「さようなら」

「ありがとうね」

「元気でね」

そういうと、ホカスリ氏はフワフワと、まるでタンポポの綿毛が風で飛んでいくように夕暮れの空に舞い上がり、二度、三度、その翅をキラリと光らせて、林に消えて言った。

ホカスリ氏と過ごした2ヶ月と少し。ホカスリ氏は次女に大きな何かを残してくれただろう。ふわふわと夕暮れの空に舞い上がるホカスリ氏に、私も胸が熱くなった。ホカスリ氏と過ごした時間は、今年の夏の忘れられない思い出となった。

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