エビフライがおしえてくれること
散歩道のある場所に、一本の松の木がある。そこは毎日多くの人が通る場所だが、おそらく多くの人はこの松の存在にさえ気付いていないと思う。私は毎回ここを通るたびに探すものがある。それはエビフライとよばれているものだ。
といっても、これはマツボックリを動物が食べた痕跡である。マツボックリを食べる動物は沢山いるが、この食痕について、いろんな人にきいてみたが、どうやらリス(ニホンリス)の可能性が高いようだ。
私は5年ほど前に一度だけ、散歩道でニホンリスに遭遇したことがある。とある道でバッタリと出会い、急いでカメラを構えようとして、足を滑らせて転んだ。そこはかなりの急斜面であったから私は斜面を滑り落ちた。同時にリスは見失ってしまった。
かつて松が沢山生えていた急斜面の下あたりに住んでいる人の証言では、かつてはよくリスを目撃したという。ところが、松がだんだんと枯れ始め、すっかり減ってしまった。それと時を同じくしてリスは姿を見せなくなったという。
その話しをきいて短絡的に思うことは、松が減った=リスの餌が減った=リスが減った、という公式であるかもしれない。だが、私はちょっと違うことを思っている。
リスはマツボックリしか食べないわけではない。ドングリだって食べるだろう。コナラやクヌギのドングリならば、それはもう地面をドングリで敷き詰めたようになるくらいに豊富にある。だから、松が減っても餌には困らない筈である。
私がこの地に来た15年ほど前の記憶をたぐりよせてみれば、その、松が沢山生えていた急斜面は、かつては、ほとんど木が生えてない禿山に近い状態のところが沢山あったように記憶している。松の木もそれほど高く育ってはいなかったと思う。そこがだんだんといろんな木や草に覆われて、深い森のようになっていくと同時に、松が枯れていったような記憶がある。松はもともと土地の痩せた急斜面のような場所に生えるのではないのか?そこが次第に緑に覆われていき、土壌もかわっていき、松の生育には不適になっていったのではないか。そして、木々が繁り、松は追い払われていったのではないか。かつて、松が沢山生えていた頃は、それほど木々も繁っていなかったので、リスが木の間を移動するのが比較的よく見えた。だが、だんだんと木々が生い茂り、見えなくなっていったということではないかと私は思っている。そんなことなら、ちゃんと記録にとっておけばよかったと、いまさらながら思う。
少なくとも、今でも、数少ない松の木の下では、毎回、必ず真新しいマツボックリのエビフライがあるので、リスは今でもこの松の木にやってきているはずだ。私はその姿をいつかカメラにおさめようと思う。人々が誰も知らずに通り過ぎる松の木に、誰もしらないリスがいる。とてもワクワクする。






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