秋のトンボ
台風一過の日曜日、いつもより少し早く起きてみたら、きれいな青空が広がっていた。そうなると心はいつの間にか散歩道に飛んでいる。朝食が終わってから散歩道にいってみた。いつもの台風一過の日のように、葉っぱや枝が散らばっていたが、すでに色づいた葉が多く秋の気配だった。
稲刈りの済んだ田んぼでは、沢山のアキアカネが連結産卵をしていた。それはもう産卵ラッシュという状況だった。
先週、オオアオイトトンボが沢山連結しているのを見た。オスが尻尾の先についた連結器でメスの首のあたりを掴み、その状態でとんでいく。アカトンボやシオカラトンボといったトンボは連結していても、飛ぶ時はハート型に丸くなって飛ぶのが多いが、オオアオイトトンボは真っ直ぐ一直線に繋がって飛ぶ。しかもゆったりと、ヒラヒラと飛ぶ。それはピーク時には物凄い数になる。夕陽に翅がキラキラ輝いて、とても美しい。
秋は夕方の散歩がいい。連結したトンボがヒラヒラと夕陽に光って飛んでいたり、草の穂が夕陽に輝いている。ねぐらに帰るスズメの井戸端会議やモズの高鳴きなどが賑やかになる。日が傾いて、影が長くなり、空気が少しヒンヤリしてくると、放射冷却が始まるのか、遠くの物音がよく聞こえるようになる。空気に秋を感じる。
トンボは秋に連結して卵を産むものが多い。オスとメスがつながって。彼らは、一生の最後に、パートナーを見つけ、一緒に飛ぶ。そして産卵する。産卵後も12月の初めくらいまでは見かけることがあるが、それはほとんど余生を送っているトンボだ。水の中の卵はヤゴに育ち、来春に上陸し、飛び始める。中には何年も水の中でくらすものもいる。餌が少ないと成長に時間がかかるらしい。
散歩道では、秋に、ホソミオツネントンボをよくみかける。茶色く細いイトトンボだが、彼らはその姿で冬を越す。だから、たまに冬にみかけることもある。そうして春には鮮やかな水色に変わる。
秋のトンボの連結に、まだこの世の中に人間が登場するはるか昔から延々とつづいてきた生命の営みを見る。そして、それを作り上げてきた自然のはるかに長い時間の流れを感じる。まさに目の前で、連結し、子孫を残し、消えていくトンボたちの季節。そこに、はるか昔からの生命の営みを見る。
今、この場所はまだ人の生活とトンボの生活が自然に接しているのだ。人々が田んぼで米を作る。トンボはその田んぼで育つ。その当たり前のこと。当たり前だが、それは人間がまだ少しだけ自然の一員であることの証だと思う。いまや都会の中の公園に、無理やりにトンボをおびき寄せようとし、それが環境を守ることだと勘違いしている人々。やがて、それは勘違いだと気付かなくなる。その前に、本当の人間と自然のかかわりを多くの人が見る必要があると思う。本当に守らなければならないのは何なのか、私達はいま何を失おうとしているのか?それはどんなことなのかと。







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